新しい飲食FC・ライセンスビジネスのマッチングを形にする | FOOSTA FC - フースタ FC -

株式会社CANVAS代表取締役社長 本間保憲氏FCインタビュー

Pocket

2011年、大手居酒屋チェーン「北の家族」から独立を果たした本間保憲氏率いる株式会社CANVAS。氏がこれまでのキャリアで得た業態開発、マーケティング、ブランディングのノウハウをいかした展開力と、地域に合わせた丁寧な店づくりを徹底する個店力を兼ね備える店を展開する。そんな同社が特に力を入れているのが、人材教育だ。「地域で長く続く店を一緒につくっていきたい」と話す本間氏。地方でも質の高い教育をリアルタイムでうけられるシステムを開発し、同社が誇る人気店「板前バル」のライセンス展開とともにリリースした。今回は、CANVAS成功のエッセンスがつまったライセンスパッケージについて、本間氏にうかがった。

—まず創業の経緯をお聞かせいただけますか。

DSCF6548飲食の世界に初めて入ったのは、地元・山形のフレンチレストランでした。料理の勉強にと思って入ったんですが、全然続かなかったんですよ。2年くらいで辞めてしまって、東京に出てきてフラフラしていたんです。たまたまアルバイト情報誌を見て入ったのが居酒屋チェーンの「北の家族 町田店」。僕が入った当時は、13店舗くらいでしたが、そこからどんどん店舗数を増やしていて上り調子でした。そこから数年で100店舗を超えて、上場。僕は店長からマネージャーになって、部長、役員と歴任しました。結局そこに20年ほどいましたね。その間に、上場も、倒産もあって、4回もオーナーチェンジしたんです。そのなかで一番大きかったのは、セラヴィリゾートという会社がオーナーになった時、いろんな業態に挑戦できたことですね。僕も業態開発に携わりました。新しい会社と一緒に居酒屋以外の業態を立ち上げたり、店舗開発をしたり。ピーク時は全国で280店舗くらいありました。
そこで20年間飲食店経営のいろんなノウハウを勉強させてもらいました。それで、2011年4月にCANVASを立ち上げて独立しました。

—飲食店の業態開発からマネジメント、ブランディングなど20年間で実績を積んでこられて、独立と。独立一号店はどちらですか。

一番最初が六本木のミッドタウン向かいに居酒屋「阿波尾鶏」。もともとエイチアイシステムの時に運営していた店舗だったんですが、倒産時に僕が引き継ぎました。2011年2月から会社設立準備をはじめて、3月には東日本大震災。まわりには絶対やめたほうがいい、と言われたんですが、ちょっと待て、と。3.11で想像を絶することが次々と起きたわけじゃないですか。今後自分が生きている中で、これ以上のことは起きないんじゃないか、だからこそ今スタートすべきなんじゃないか、って思ったんです。それで、4月に会社を設立して下旬には「阿波尾鶏」をオープンさせました。ですが、やはりお客さんがこない。半年間は毎月毎月200万円くらい大赤字でしたね。

—そこからどう立て直していったんですか。

いわゆる飲食店の基本を守っただけです。10月くらいからぼちぼちお客さんが来だして、そこから上り調子。結局初年度は1億円くらい売上げたんですよ。営業利益でいうと、1000万円くらいでしたね。前半の赤字が続いた時期はどうやってお金をまわしていたのか、記憶がないんですよ。(笑)

—これまでの経験、ノウハウ、実績があってこその立て直しですね。

本当によかったです。会社としては、もともと「飲食のプロ集団を目指そう」ということを理念にしていたので、展開していくことが前提でした。で、翌年7月、銀座三丁目に「板前バル」一号店をオープンさせました。

<「板前バル」スキームの要は人にあり。居酒屋チェーンの人不足と和食業界の人余り>

—「板前バル」のコンセプトはどこから着想を得たんですか。

螟冶ヲウ「北の家族」を20年間やってきて痛感したのが、居酒屋チェーンの人手不足。うちも例に漏れず困っていました。そんな時にたまたま、知り合い調理師会に入っている和食屋さんをされている方から、「うちの若い衆を預かってくれ」と依頼されたんです。今から17、8年前。居酒屋チェーンがどんどん大きくなっていた時代ですね。その背景では、割烹や懐石料理店はどんどんなくなって、若い和食の料理人の行き場がなくなってしまっていたんです。それで僕のところに声がかかったというわけです。僕もこれはすごくいいスキームができたなと思いました。和食縦社会での世界は縦社会で、すごく厳しい環境です。働く若い人も凄く真面目。「オヤジのいうことは絶対」という感じでね。我々にとったら良い人材だなと。(笑)でも、いざ入ってみると、休みを週2日もらえて、残業代も出て、ボーナスももらえてと環境がいいとサラリーマン化しちゃって、どんどんグータラ人間になっていっちゃったんです。それを見て、こんなんで和食って大丈夫なのか、と。和食の人材をしっかり教育できる体制が必要だと感じたんです。それができる飲食店にしようと思って作ったのが「板前バル」だったんです。

—具体的にどのような人材を育成するんですか。

DSCF6534マーケティング、マネジメントができる職人です。北の家族時代に、僕は商品開発も見ていたんですが、料理人がいないとどうも見てくればかりに走りがちになってしまう。盛りつけとか食材、器とかでごまかしちゃうんですよ。それで、総料理長はじめ料理人の教育を担当していたんですが、職人だからこだわりが強くてなかなか思い通りにいかない。「俺のうまいから食ってみろ」って感じの人が多くて(笑)。そうじゃなくて、職人と言えどお客さんの要望に合わせて、料理をカスタマイズできなきゃいけないんですよ、これからは。「マーケティングの感覚、思考が必要なんだよ」と教えていたんです。うちのコンセプトの中で、飲食のプロフェッショナルには3つの要素が必要だといっています。一つは技術・経験、もう一つはマネジメント能力、もうひとつはマーケティング。我々が言うマーケティングとは何かというと、お客様のニーズを知って、それに会わせて食事なりサービスなりを提供できるというのが、定義です。マネジメントは、ヒト・モノ・カネの管理。この3つをバランスよく発揮できる人が優秀な人で、特に料理人はこの3つをバランスよく自分のものにしていくと無敵になる、というのがうちの考え方です。

—経営、マネジメント、マーケティングができる職人を育てられているんですね。

そうです。こういった人材と教育ノウハウを背骨に、お客さんにしっかり中身を伝えていけるような商売は、長く継続していけます。地域のお客さんに長く愛してもらうには、経営感覚のある職人が必須だと思いはじめたんです。「和食の料理人」を総称で言うと、「板前」。それで、2012年開業するときに、板前をキーワードにしようと。もうひとつ飲食ビジネスに大切なのは、ブランディング。ある程度トレンドに踏み込んだブランディングが必要です。オープンした2012年当時はバルブームでした。その流れをうけて、リーズナブルに本格和食を、バルスタイルで提供するという業態に行き着いたんです。

—なるほど。料理人がいないと人材不足に悩んでらっしゃるオーナーさんが多い中、御社はどこから料理人を集めてくるんですか。

料理人の間には、ある程度ネットワークがあります。そこから紹介や話をうちの話を聞いてやってくる人も多いですね。また、うちにはマーケティングなど料理以外のことも学べる環境が整っているので、そこを求めてくる料理人も多くいます。

—現在、「板前バル」には料理人は何名いらっしゃいますか。

直営店舗で28名です。

—専門学校からの採用はありますか。

はい。専門学校の先生方も、僕らのビジネスモデルに賛同して協力いただいています。「うちの生徒を引き取ってもらえませんか」という相談はよくいただきますね。特に地方の学校からのオファーが多いんですが、社宅を用意したりなど、よりコストがかかってきてしまうので、これからのFC展開では地方をメインに出店していきたいと思っています。

<独自の教育システム“極システム”>

—マネジメントやマーケティング面の教育していく仕組みはどうなっていますか。

現在、社内では月に1回の「飲食プロ塾」を開催して、僕が直接料理人たちにマーケティングなどについて教えています。これを展開用に仕組み化した「板前極システム」を今回のライセンスの中で提供していきます。

—「板前極システム」というのは具体的にどういったものですか。

まずは“板前”の技術面でいうと、クラウド上にレシピをのせていつでも動画で閲覧できるようにしています。例えば、「板前バルの刺盛り」というメニューがあるんですが、そのレシピや作業工程、調理ポイント、盛りつけ例などを動画でアップしていくというイメージです。うちは和食なので、季節に合わせて旬の食材を取り入れてどんどんメニューも変えていきます。その際に、板前によってブレがでないようにするのがこの仕組みです。

—この教育システムがFCパッケージについてくるんですね。

基本プランのオプションとして利用いただけます。また、うちはFCではなく「ライセンス」と定義しています。その違いは、バイジングをするかしないかです。一般的にFCにはスーパーバイザーがいて、バイジングする。うちのライセンスは、スーパーバイザーを置いていません。バイジングする人が板前なんです。だから、板前付きのパッケージを基本プランにしています。この基本プランとは別に、うちの板前によるバイジングの代わりに、この板前を育てるシステムもありますよ、とご提案しています。

—板前付きと、そうでないパッケージがあるということですね。特に板前が付いていないパッケージについては、「板前極システム」で補完していくというイメージ。

そうですね。料理人には、まずうちで研修していただいて、その後、自店に戻ってシステムを利用しながら現場でいかしてもらいます。自社の料理人にもっと勉強させたい、というオーナーさんにはうってつけだと思います。

—CANVASから出る板前の派遣期間は。

出向という形で1年です。この間に新しい職人を自社で雇用した、もしくは今後の料理長候補にマンツーマンでつけます。

—このシステムを利用する料理人の経験は、どれくらい必要ですか。

DSCF6539経験は問いません。そもそも「板前」とは、一般的には「和食店で修行してきた人」という認識ですが、僕らはそこにこだわっていない。洋食からうちに入ってきても、バランスよく成長すれば彼も「板前」です。それがどれくらいの期間で成長できるかは、やはり個人の努力によるところが大きいですね。望めば板前として成長できる環境は整っています。なかには1年で板前になる人もいますよ。

—システムには、調理技術以外のマーケティングやマネジメントについては、具体的にどのようなものが含まれますか。

例えば、SVチェックやマニュアル管理表など、飲食店運営に必要なものは一通り入っています。「技」「マーケティング」「マネジメント」とカテゴリを分けてシステムに入れています。

—店舗ごとのメニューの自由度はどれくらいありますか。

グランドメニューは、本部のレシピ管理で固定しています。これにプラスして季節のおすすめが20~30品あります。この部分が板前たちの自由にできるところです。自由といっても人によって差がついたり、ブレが出ないようにうちの総料理長が管理します。例えば、うちは各店お通しに力を入れているんですが、営業前に「もうちょっとポーション上げましょう」とか「盛りつけの色合いを修正して」などのチェックをしてから、お客さんにお出しします。こうやって他の店舗のお通しやメニューを共有することで、これを見ている全料理人が切磋琢磨するようになるというメリットもあります。

—料理人としても創作意欲がわきますね。

そうですね。他の店に負けたくない、と。それも料理人の習性なんですよ。

—板前や料理人というととても属人的なイメージですが、教育システムをしっかり整備することで、展開可能性を高めているんですね。

DSCF6538そうですね。僕たちが重きをおいているのは板前のブランディングです。板前をブランディングできると、長く商売ができる。それはなぜかというと、お客さんのニーズにきちっと対応できるから。常にお客さんのニーズに合わせて商品開発ができたり、パッケージのカスタマイズができたりも可能になってきます。よくご相談いただくのは、「人をどう管理していいのかわからない」「商品開発をどうやってしたらいいのか分からない」「どう業態開発したらいいのかわからない」ということです。うちはパッケージは自社業態を運営するのに近いものなので、そういった方々にご提案したいですね。基本的には自由に運営できるんですが、人材を育てていけるレールはしっかりひきます。ここがうちの一番の差別化ポイントだと思っています。「板前バル」を1店舗やってもらうと、自社ブランドの作り方や人材教育など、一通りのノウハウが全部つまっています。

—というと、「板前バル」の看板でなくても問題ないということですか。

そうですね。ただ板前バルのブランディングや認知度にのっかった方がいいですよ、とはおすすめしています。

—対象企業の基準は。

最低1~2店舗飲食店を経営している、もしくはしたことがある企業です。であれば、経験年数は問いません。現場に丸投げしているオーナーさんではなく、しっかり現場に関わって把握している方がいいですね。

—板前バル直営店の平均売上は。

お店の規模によっても変わりますが、少なくとも坪25万円前後はいきますね。

—対象エリアは。

特にありませんが、今我々が特に力をいれているのは、地方の展開です。地方版コンセプトとして、「地元の食材を使った板前バル」というのを掲げています。地元でとれたきゅうり、トマト、三陸でとれた魚などです。地場でとれたものってすごくおいしいじゃないですか。それに、地元のオーナーさんは、地元を大切にする人が多い。それを板前バルとして商品に仕上げて、お客さんに訴求していければいいなと。

—基準の坪数は。

最低20坪。それ以下はおすすめしないです。

—今回ライセンス展開しようと思ったのは、地方の食材や人材を発掘したい、というところが理由ですか。

それもありますし、長く地元で愛される店づくりを一緒にやりたいんですよ。突発的に儲かる店ではありませんが、ずっと右肩上がりで長く続くお店づくりができます。

—最後にオーナーさんにメッセージを

お客さんのニーズに常に対応していけるのが、我々の強みです。お客さんが一番求めるものは、“本物”。本物の商品やサービス、マネジメントを提供していくために大切なことは、本物をやれる人。そこを逃げちゃダメなんです。コンセプトや食材ではごまかせない飲食店の肝です。うちは人ありきの店をやっているので、しっかり運営をやっていればこけることはありません。「板前極システム」の中でも何回も出てくるキーワードが「当たり前のことを当たり前にやる」ということです。それを一緒にやっていける方を募集します。
(本間保憲プロフィール)

記事一覧トップへ

Copyright © 2014 FOOD STADIUM INC. All Rights Reserved.