2012年にラーメン業界でブームが起こり、一躍、その名を知らしめた鶏白湯。その鶏白湯ラーメンのパイオニアとして、チェーン展開を行ってきたのがテイクユーだ。ただし、同社は単なるチェーン展開ではなく、「ボランタリーチェーン」として、チェーン店と個店の双方のメリットを同時に生かした店づくりを実践してきた。2017年11月現在、直営店は25店舗、FC加盟店は国内外に76店舗を数える。今回はテイクユー代表取締役の大澤武氏に、その店づくりの強さの秘密を聞いた。
―まずはこれまでの経緯を教えてください。
もともと電子機器メーカーでサラリーマンをしていましたが、2002年の春ごろ、物件に縁があり副業としてFCで味噌ラーメン店の経営を始めました。売り上げは、最初は厳しかったものの、徐々に上がりはじめたので、店舗を増やし、最終的にラーメンと焼鳥で計4
店舗をFCで経営していました。
―その間、サラリーマンは辞めなかったのですか?
ええ、平日はサラリーマンとして、飲食店に向けてPOSなどのIT管理システムの企画営業などをしている傍ら、FCジーとしての経営を。さらに、休日には「週末飲食オーナー倶楽部」を発足し、飲食で副業をしたい人の支援活動も行い、この3つを同時進行する日々でした。
―とんでもないパワーですね!
我ながら、よい経験ができたと思っています(笑)。これらの経験を通して、飲食って結局は人と人とのつながりがもっとも大切なんじゃないかって思うようになりました。そこで、飲食店と飲食向けサポーター企業のマッチングを目的とした支援するサイトを立ち上げるべく、2011年4月に会社を退社しました。
―鶏白湯ラーメンを始めたきっかけはなんだったんでしょうか?
ちょうどそのころ、「週末飲食オーナー倶楽部」で支援していた塾生が独立するというので、私が開業コンサルを行うことになったんです。そのときに目を付けたのが、鶏白湯ラーメン。当時、都内にはまだ鶏白湯ラーメンをやっている店は少なかったですが、今後流行るだろうとにらんでいました。また、茨城・古賀の鶏白湯ラーメン店「麺堂 稲葉 古河本店」で食べた鶏白湯ラーメンに感銘を受けたことも後押しし、2011年11月に鶏白湯のラーメン店「麺匠 ようすけ 中野本店」を開業。さらに、2012年、知り合いから新橋にある物件の紹介を受け、そこで自ら直営店をやることになった。ただ、そこは裏路地で人通りも少ない物件。ドロつけ麺の業態をやっていた経験もあるので、つけ麺にしようかとも思いましたが、それでは引きが弱いと思って。「麺匠 ようすけ」が好調だったこともあり、ここでも鶏白湯で勝負することにしました。この物件は絶対に成功させたいと思ったので、徹底的に研究を重ねた。他店視察で、メニュー構成や店内の掲示物などから見える商品の打ち出し方などを観察したり、ラーメンマニアの知り合いにたびたび試食をしてもらい意見をもらったり、FCで焼鳥屋を運営していたノウハウを生かし、具につくねを入れて、“居酒屋直伝のつくね”と打ち出すなど、ラーメン以外の世界を加えることでストーリー性を持たせたり。そうして、現在の原型ともなる鶏白湯ラーメンが完成し、2012年7月に「麺屋 武一」をオープンしました。
―そのころはまだ鶏白湯ラーメンの黎明期でしたが、営業の状況はどうでしたか?
とにかく視認性の悪い居場所だったので、オープンから最初の1週間は、店の近くで朝7時から通勤途中のサラリーマンに向けてビラ配りをしました。1週間が経ったころから、次第に口コミでお客さまが増え始め、ビラ配りの必要はなくなりました。そしてオープンから約1カ月後、テレビ番組で紹介され、そこから一気にブレイク。12坪18席の店ですが、月商は700万~800万円。ときには行列ができるほどに。そこで、この「麺屋武一」のヒットをきっかけに、2012年11月にテイクユーを創業し、本格的に鶏白湯ラーメンのチェーン事業を展開していくことにしたんです。
―ブームよりも一足先に鶏白湯に目を付けた、その理由はなんだったんでしょうか?
鶏白湯は、なによりもターゲットの広さが魅力です。濃厚でありながら食べやすく、スープは最後まで飲み干せる。ガッツリ食べたい若い方から、お年寄りまで、コラーゲンたっぷりなので女性にもおすすめできる、老若男女問わずに人気の高いアイテムです。また、ムスリムの方など、世界では宗教上の理由で豚や牛が食べられない人も多いですが、鶏出汁の鶏白湯ならその点もクリアできるため、世界からの注目も高い。今後、当社では鶏白湯のハラル認証の取得支援も行っていこうと考えています。また、鶏をテーマとしているので、鶏を使った一品料理を提供することも可能で、ちょい飲み需要にこたえることもできます。直営の青山店では22席の店内で、1日で20リットルの生ビールの樽が空くこともあるんですよ。
―現在の店舗数は?
2016年の夏から出店を加速させ、2017年11月時点で直営店は23店舗、加盟店は76店舗(海外8店舗含む)鶏白湯のほか、煮干しラーメンの店舗もあり、それは全体の約2割を占めます。
―テイクユーが手掛ける店の強さとはどこにあるのでしょうか?
店舗展開をするにあたり、大切にしているのは、すべての店を「個店」として打ち出すこと。というのも、どんなにいい商品を作っても、「チェーン店」だと思われてしまっては、グルメサイト等の口コミが盛り上がらない。それぞれの店に、個店らしい手作り感を打ち出すことで、自然と話題になり、メディア取材の依頼数も倍増し、ヒットにつながります。実際に、ラーメン特集のムック本では、通常でしたら1冊のなかで同じチェーンの店はそう何店舗も掲載されませんが、当社の加盟店はそれぞれが別々のブランドであると認識されるため、同じ1冊の中にも何店舗も掲載されていることもしばしばなんです。
(画像は、同社の店舗が掲載された雑誌。タグが同社の店舗ページだが、1冊に複数のタグが付いていることがわかる)
―これだけの店舗数がありながら、それぞれの店が「個店」としての魅力を発揮しているんですね。逆にチェーンとしてのメリットはどのようなところに生かされていますか?
養鶏場に近い場所にある自社工場にて一括でスープを製造することで、安定した品質を保つのが難しいと言われる鶏白湯スープを一定のクオリティで供給しています。店舗でスープを炊く必要がないので、スタッフの人件費や光熱費、厨房機器への投資等を削減し、職人いらずのオペレーションが可能になるわけです。ですので、従来のラーメン店としては狭い物件でも、開業が可能。小型居酒屋やバルなどの業態変更にも向いています。また、当チェーンはそれぞれが独立したブランドだからこそ、同じクオリティを維持するためのコストがかからず、ロイヤリティ0であることも大きな魅力です。ですので、ベースとなる鶏白湯スープは同じですが、メニュー開発はそれぞれの店に裁量があり、加盟店独自にその地域の食材や食文化で個性を打ち出すことも可能。加盟店独自の違うブランドで多店舗化やドミナント展開もできます。さらに、万が一どこかの店舗で事故があったとしても、異なるブランドであるため、直接的な風評被害がないというのも強みですね。
―チェーンメリットを生かしながらも、個店らしい魅力も同時にアピールできる。それがテイクユーへの加盟の最大のメリットですね。加盟にあたっての条件はありますか?
加盟の相談に来た人には、まず当社の店で商品を食べてもらうように言います。食べてもらって、本当に味に惚れ込んだ人とやりたい。お金儲けだけが目的の人はお断りします。というのも、これまで自分のFC経営やFCの経営支援をしてきた経験から、最初の動機がどのような思いであるかがうまくいくかどうかのカギだと思っています。FC経営をする中で、困難にぶつかる場面は必ずある。そのとき、「おいしい鶏白湯ラーメンをお客さまに提供したい」という原点に立ち返ることができる人だけが、成功すると思うのです。
―今後やってみたいことは?
日本各地の企業と組んで、ご当地ラーメンを作りたい。強い地域チェーンを作り、「ボランタリーチェーン」として、全国に鶏白湯を広げていきたいですね。